月経随伴症状とは?
月経随伴症状とは、月経前や月経中の不快な症状の総称であり、月経前症候群と月経困難症を合わせた一般的な考えです。月経随伴症状の異常は鍼灸では適応となります。稀発月経や続発性月経なども鍼灸治療の対象となります。
月経前症候群(PMS)
月経開始の3~10日の間続く精神的、身体的症状で、月経の発来とともに減退・消失するものを月経前緊張症といいます。
【病因】不明であるが、黄体期の卵胞ホルモンと黄体ホルモンの不均衡、体液の貯留が原因と考えられている。
【症状】下腹部痛・頭重感・頭痛・憂うつ・めまい・耳鳴り・いらいら・乳房痛・下腹部膨満感・のぼせ・悪心・落ち着かないといった身体的な症状と精神的な症状を認めます。あまりに多くの症状と関連づけられているため、明確な定義が困難になっています。月経前症候群は女性の20%〜50%に見られます。
【治療】対症療法:ホルモン療法、利尿薬、精神安定剤、鎮痛薬
PMSは40歳代以上に多いとされていますが、高校生などもPMSを理由に学校を欠席しているとの報告もあります。
月経困難症
月経に伴う下腹部不快感・下腹部痛・腰痛が治療を要するほど強い場合を月経困難症といいます。月経困難症の疼痛は子宮収縮(子宮内膜から産生されるプロスタグランジンが多いと子宮収縮が強くなり、月経痛をきたす)により生じると考えられています。
【病因】
・機能性月経困難症:黄体期後期に子宮内膜で産生されるプロスタグランジンの過剰による子宮の過収縮および虚血。
・器質性月経困難症:多くは子宮頸管狭窄または閉鎖、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫
【症状】下腹部痛が背部や大腿に放散し、消化器症状・精神神経症状などを伴うことがあります。これらの症状は、数時間から数日持続します。
【治療】プロスタグランジン合成阻害薬など。器質性月経困難症においては原因疾患の治療。
当院での月経前症候群(PMS)・月経困難症へのアプローチ法一覧
月経困難症に対する治療は薬物療法などによる対症療法が主であるため、鍼灸治療が非常に有効な手段となります。当院では月経困難症の患者さんに月経開始後の5日間の様子を月経障害指数調査票に記録してもらっています。鍼灸治療の効果を数値で確認できるため、より積極的に鍼灸治療に取り組んでいただけると思います。
• YNSA(山元式頭鍼療法)によるアプローチ
「YNSA」は脳を刺激して、中枢神経や脳のさまざまな器官、自律神経や脳神経に大きく働きかけます。よってこれらの症状に、大きな効果をもたらすことがはっきりとわかります。
「YNSA」では、手や足など体の部位とつながる【基本点】、額にある目、鼻、耳、口につながる【感覚点】、大脳や小脳、脳幹とつながる【脳点】、心臓、胃、肝臓といった内臓につながる【Y点】、視覚や嗅覚、聴覚などの感覚や顔面の筋肉をコントロールする視神経や三叉神経、顔面神経などにつながる【12脳神経点】などを用い、さまざまな症状にアプローチします。
当院には、中学生~40歳代の方が月経随伴症状を訴え来院されます。多くのケースでは、YNSA(山元式新頭針療法)をベースに脳点やY点膀胱を使用し、ホルモン分泌の機能を調整し、月経痛・下腹部の不快感・鼠径部痛・頭痛などの諸症状を改善しています。
• 赤羽式知熱感度測定法と皮内鍼治療
皮内鍼の考案者である赤羽幸兵衛(1885ー1983)は、「知熱感度測定法」や「シーソー現象」などの研究・開発を行い、鍼灸の歴史に大きな足跡を残しました。
12の”経絡のバランス変化”を数値的に捉える測定法は、施術者と患者さんにとって、施術前後の経絡上の変動を数値により共有できるため、客観性を現す方法となります。
経絡機能のアンバランスを測定したあとは、弱っている経絡を興奮させる目的で、”皮内鍼”を使用します。”皮内鍼”は真皮中へわずかに刺し込む方法であり、極く弱い刺激を持続的に与えることができます。
• 平田式十二反応帯によるアプローチ
平田式内蔵十二反応帯と、縦の線経絡の組み合わせにより、PMS・月経困難症への鍼治療ポイントを定めます。
月経困難症・PMSの鍼灸治療部位は大部分は膀胱の領帯を使用します。この桃色の領帯に手を滑らせていくと、電位的な異常をともなう皮膚の引きつりを感じ取ることができます。体表から臓腑に作用を及ぼす各領帯の治療ポイント(桃色)に、セラミック電気温灸器・使い捨てはり、円皮針などを使用します。
• 深谷伊三郎式お灸法
施灸の効果判定に用いる小野寺直助博士の月経圧痛点(🔴ポイント)。月経痛の人に常時現れている点になります。膀胱兪や帯脈へ施灸します。自宅での継続施灸の指導も行います。
お灸の治療にあたり、適切な経穴の検出、施灸量を考慮し、施術を行います。直接的にツボを熱刺激する際には、もぐさと皮膚の間に灸点紙シールをあて、1ミリ以下の穴を通して熱刺激を行います、多少赤くなることはあっても、目立つ痕を残すことはありませんので、ご安心下さい。
• 東洋医学的アプローチ
東洋医学的な考察を踏まえたアプローチも実践しています。先人の長い経験のうちに導きだされた「証」、【脾気虚】【肝鬱】【血虚】【腎虚】などの月経異常に関する考察は現代でも同じ法則で運用されており、非常に有効な手段となります。
以上のようなアプローチ法を組み合わせて鍼灸治療します。東洋医学による治療法は、現代医学的な病名にこだわりなく東洋医学からみた異常所見に従って鍼灸治療します。是非ご相談ください。