「ヒステリー球」「梅核気」とは?

「のどに何か詰まったような感じがする」「疲れやストレスを感じると違和感が増す」「胸が張って、みぞおちが硬い」上記の症状で、耳鼻咽喉科や神経科・内科を受診しても、何も異常は証明されない。何も異常がないと言われても、依然として自覚症状が残っているので、「何か病気が隠れているのではないか」とますます不安になる。

本症はストレスを引き金に発症し、内向性の性格の人に起こりやすく、しばしば再発する傾向があります。女性に圧倒的に多く発症します(当院では高校生のケースもありました)。現代医学では、「ヒステリー球」「咽喉部異物感」とも表現されています。

東洋医学では、ちょうど梅の実(梅核)が喉につまっているように感じることから「梅核気」と呼ばれています。2000年前の書物にも「胸が張って、みぞおち部が硬くなり、のどの中が何となく気にかかり、焼けた肉が引っかかったようで、これを吐き出すこともできず、またこれを飲み込むこともできない」と記されています。

梅核気の病因と発生機序

梅核気の原因は、主に①憂いや怒りなどの情緒の乱れによる②痰などによる経絡の流注の阻害による、気の運行が滞っている病態(気滞)とされています。本症だけが単独で起こることはなく、他にも「えへん虫」などいろいろな症状を合併したケースが多いです。

当院での梅核気へのアプローチ法一覧

•東洋医学的な考察を踏まえたアプローチ

梅核気の鍼治療は主に2タイプみられます。

一つ目は肝の機能失調を整えることによって、「のどの詰まった感じ」が消失するケース。頭痛やふらつき、肩こり、不眠などを訴えられることが多いです。

2つ目は脾や胃の機能失調を整えることで、詰まり感が消失するケースです。このタイプの場合、みぞおちの違和感やシャツの第2・3ボタン付近の鬱滞、胃腸の不調などが顕著にみられます。

• YNSA(山元式頭鍼療法)

「YNSA」は脳を刺激して、中枢神経や脳のさまざまな器官、自律神経や脳神経に大きく働きかけます。よってこれらの症状に、大きな効果をもたらすことがはっきりとわかります。

「YNSA」では、手や足など体の部位とつながる【基本点】、額にある目、鼻、耳、口につながる【感覚点】、大脳や小脳、脳幹とつながる【脳点】、心臓、胃、肝臓といった内臓につながる【Y点】、視覚や嗅覚、聴覚などの感覚や顔面の筋肉をコントロールする視神経や三叉神経、顔面神経などにつながる【12脳神経点】などを用い、さまざまな症状にアプローチします。

•深谷式お灸法

背骨の真ん中督脈の身柱、神道、霊台のツボへの施灸は非常に効果的です。また生命エネルギーの走行路である経絡(肝経)へのアプローチとして「大敦」のツボを使用するケースは多く見られます。

以上のようなアプローチ法を組み合わせて鍼灸治療します。東洋医学による治療法は、現代医学的な病名にこだわりなく東洋医学からみた異常所見に従って鍼灸治療します。ヒステリー球・梅核気と性格は多いに関係するとされています。のんきな性格や、アバウトな人間、大器型には決して起こらないとされています。梅核気は不満やストレスが引き金となるため、当院ではフォーゲル博士の呼吸法や自宅での数分間のエクササイズなどもお伝えしています。

鍼灸には心を癒す働きがあります。是非ご相談ください。

・参考文献『図解経筋学』/西田皓一/東洋学術出版社