腰痛は現代人にとって大きな障害のひとつです。デスクワーク、重量物を運搬するなど職業にかかわらず、多くの方が腰痛に悩まされています。生涯経験率70%、複数回繰り返し起こす人は25%~40%といわれるほど、皆さんにとって腰痛はなじみの深い症状です。
腰痛の多くは4週から8週以内に治る急性痛でありますが、一部の患者さんは慢性化の経過をたどります。また急性痛、慢性痛患者ともに、およそ70%は非特異的腰痛といわれており、はっきりとした原因は存在していないことが多いようです。
当院の施術を受けた方の声
※頂いたお手紙の内容が、初回時の全体調整を目的とするアプローチをイメージしやすいものでありましたので、患者さんの承諾を得てホームページ掲載させていただきました。
見かけの上で、非常に微小な刺激が大きな効果を生むメカニズムが鍼灸・徒手療法には存在します。
腰痛の分類とその特徴
• 筋・筋膜性腰痛
【病態】
急性:急激な動作で筋・筋膜に過伸展や部分断裂が生じる。重たいものを持ち上げるなどの遠心性収縮は非常なダメージを受けるものです。
慢性:筋疲労や組織の瘢痕化による循環障害や刺激が原因。腰痛の発症と緩解を繰り返す(腰痛の慢性化)。
【症状】
患部に局限した痛み、疼痛性側弯。前屈動作での障害が強い。
• 椎間関節性腰痛
【病態】
急性:急激な動作により関節組織が損傷されて生じる。
慢性:退行変性により椎間関節に変形性関節症を生じる。
【症状】
背骨に近い部分が痛い。椎間関節に負担がかかる腰部の捻転と後屈が強く障害される。
• 変形性脊椎症
【病態】
40歳前後から始まる脊椎の退行変性に起因。
【症状】
腰部が重い、だるいなど漠然とした症状。起床時や動作開始時に腰部に痛みやこわばりがあるが、運動とともに改善する。変形が進行すると、腰椎の後弯増強(腰が丸く、頭をつきだす姿勢)。
| 痛み | 特徴 |
筋・筋膜性腰痛 | 前屈 | 圧痛、硬結以外の所見がない |
椎間関節性腰痛 | 捻転/後屈 | 椎間関節部に圧痛 |
変形性脊椎症 | 起床時や動作開始時 | 重い、だるい痛み |
当院では腰痛のタイプを絞り込み、的確にアプローチします
参考までに腰痛のタイプの簡単な特徴をあげます
—椎間板症と筋性の腰痛の違い—
・椎間板症の場合、立ったりし続けると徐々に圧がかかり痛みがでる。
—椎間板症とヘルニアの違い—
・椎間板症の場合、放散痛様のものは膝より上で止まる。
—椎間板症と炎症の違い—
・炎症の場合、安静痛・夜間痛あり。
腰痛を訴える患者さんの中で注意すべき主な原因としては、
①脊椎疾患【椎間板の障害(同一姿勢が困難、前屈姿勢で痛みが増強)など】
②神経根の障害に由来するもの
③腹腔内臓器【腎盂腎炎・腎結石・膵炎・胆のう炎・胆石・腹部大動脈瘤など】によるもの
④脊髄疾患
⑤婦人科的【子宮内膜症】、泌尿器科的【前立腺炎・尿路結石】によるものなど ⑥説明のつかない体重減少
上述にみられるように中には注意すべき要因も考えられることから、部位の特定、またそれぞれの障害にみられる徴候 【安静時・夜間痛の有無の確認/シビレ/知覚異常/腹部の押圧】などによる鑑別が重要となってきます。
正確なアプローチにたどり着くことが、解決への近道です。
• YNSAによるアプローチ
「YNSA」は脳を刺激して、中枢神経や脳のさまざまな器官、自律神経や脳神経に大きく働きかけます。よってこれらの症状に、大きな効果をもたらすことがはっきりとわかります。
「YNSA」では、手や足など体の部位とつながる【基本点】、額にある目、鼻、耳、口につながる【感覚点】、大脳や小脳、脳幹とつながる【脳点】、心臓、胃、肝臓といった内臓につながる【Y点】、視覚や嗅覚、聴覚などの感覚や顔面の筋肉をコントロールする視神経や三叉神経、顔面神経などにつながる【12脳神経点】などを用い、さまざまな症状にアプローチします。
• 赤羽式知熱感度測定法と皮内鍼治療
皮内鍼の考案者である赤羽幸兵衛(1885ー1983)は、「知熱感度測定法」や「シーソー現象」などの研究・開発を行い、鍼灸の歴史に大きな足跡を残しました。
12の”経絡のバランス変化”を数値的に捉える測定法は、施術者と患者さんにとって、施術前後の経絡上の変動を数値により共有できるため、客観性を現す方法となります。
経絡機能のアンバランスを測定したあとは、弱っている経絡を興奮させる目的で、”皮内鍼”を使用します。”皮内鍼”は真皮中へわずかに刺し込む方法であり、極く弱い刺激を持続的に与えることができます。
• 平田式十二反応帯によるアプローチ
平田式内蔵十二反応帯と、縦の線経絡の組み合わせにより、腰痛への鍼治療ポイントを定めます。
腰痛の十二反応帯治療部位の大部分は大腸・小腸・膀胱・生殖器の領帯/膀胱・胆・肝の経絡などを使用します。問題の領帯に手を滑らせていくと、電位的な異常をともなう皮膚の引きつりを感じ取ることができます。体表から臓腑に作用を及ぼす各領帯の治療ポイントに、セラミック電気温灸器・使い捨てはり、円皮針などを使用します。
• パーカッション・バイブレーター
『Touch of Life(邦題:いのちの輝き)』の著者であるロバート・フルフォードD.O.が開発した回転運動を上下運動に変換したマッサージ器具。
生命としての人体は、「電磁場的な存在」であるといえます。その一面として現代医学においても特定の電磁場の周波数を用いて骨や皮膚の再生の提案がされています。
組織にダメージが起こると、電流が生じ身体の組織に「傷や凹み」が残されます。本アプローチでは、異常なトラウマをみつけてチューニングし、かたよりのない状態にします。
• 鍼通電
脊髄性の鎮痛の目的のための鍼通電。少し専門用語となりますが、「疼痛局所をさすると痛みが止まる」といったAβ線維を介したゲートコントロールに基づく脊髄性の鎮痛機序を賦活します。
脳性の鎮痛の目的のための鍼通電。脳を活性化するために手や足に2Hz〜10Hzの鍼通電を行い、痛みに関連した線維を興奮させます。下行性疼痛抑制系を賦活する手や足などの遠隔部への鍼治療。
• 棒灸(ぼう灸)
棒状の灸の一端に火をつけ、それを皮膚に直接つけないで、ツボに近づけたり遠ざけたりしながら、温度を加減して行う手法になります。
皮膚の表面が赤味を帯びてきて(フレア現象)、体の中に温かみがしみ通るように感じたら、その時点で終了します。非常に気持ちの良いものです。
以上のようなアプローチ法を組み合わせて鍼灸治療します。東洋医学による治療法は、現代医学的な病名にこだわりなく東洋医学からみた異常所見に従って鍼灸治療します。腰部の問題でお困りの方は是非ご相談下さい。
・参考文献 『いちばんやさしい痛みの治療がわかる本』 /伊藤和憲/医道の日本社